AIコラム vol. 3

AIコラム vol. 3

2024.10.10

【ビジネス・経営・環境変化・教養に生きるAIの話】

ライター 半田孝輔

日進月歩で成長するAIとどう歩調を合わせて歩むか

これまでGoogleの提供する生成AI「Gemini」を例に洞察や活用法を書いていますが、ある仕事でご一緒したクリエイター曰く「無料のGeminiは有料版ChatGPTを超えている」とのこと。意見が分かれるところかと思いますが、その方はご自身の“勉強”のために制作したポータルサイト内に掲載するブログ記事を、すべてGeminiによって作成・自動更新できるよう教育したそうです。実際に見せてもらいましたが無料版の範囲とは思えないクオリティでした。

つまり、使い方を心得ている人、適正なプロンプト(AIを動かすための指示)を入力できる人にとっては無料も有料も大差がなくなっているのかもしれません。そのポテンシャルを引き出せるのは、そもそもAIやプログラミング言語の知識やパターンを習熟しているからなのか、そうではない人でも地道に使っていけば不自由なく使えるようになるのか。現在身をもって実験中です。

先日、宮崎市役所の生成AI活用による業務効率化の取り組みがニュースで流れていました。本格導入は10月からの開始ですが、報道によるとすでに実証実験により議事録作成にかかる時間を60%減らすことができ、庁内規定などの情報検索においても十分な時間短縮を生んでいるようです。ついに地方行政においても導入がはじまったか、という印象です。

文書主義で何かとテキストに残す文化の強い行政にとって、主にテキスト生成で出力してくれるAIは強い味方になるのは間違いないでしょう。同様に法律や専門的な情報、記録を残していくような職業ではAIが前提のシステム運用になっていくかと思います。

これまで複数人で行っていたことも省力化することができる。円安や物価高、最低賃金の引き上げなど、資金力と労働力の天秤に悩む経営者は多いことかと思います。力仕事を機械が代替してくれたように、頭脳労働においてはAIが人材・資金不足を補ってくれるはず。

ただ、こうしたAIの議論をするとき、必ず「仕事が奪われる」という意見が出てきます。とくに私のような執筆業を含めたクリエイター業、金融業、士業などがよくその対象としてあがります。確かに圧倒的なスピードで調査や整理、まとめるという行為においてはAIに敵いません。しかし、あくまで実感ベースですがAIを使ってみて仕事が「奪われる」という考えはほとんどなくなりました。むしろ、煩雑な仕事を委託できる「パートナー」としての側面が強くなっています。

最近、 映画『エイリアン』シリーズの最新作を観ました。アンドロイドが登場するのですが、最初は5歳児のような話し方をしていたのが対話やAIのアップデートを繰り返すことで頭脳明晰な紳士のような“大人”になり、主人公たちをバックアップしてくれる。SF映画の出来事ですが、AIとの関わり方次第では強力な味方となり、脅威にもなる。AIとどうコミュニケーションをとるのか(どういう人格を育み、何を得意な人物にしたいのか)、という指針や目的を持つと、各人の生活や仕事に最適化されたAIを育てることができるかもしれません。

追伸)AIに言及している方はたくさんいますが、なかでもUI/UXデザイナーの 深津貴之さん、著述家・経営コンサルタントの 山口周さんの記事は活用法だけなく、歴史や時代の中のAIの位置付けを学ぶことができておもしろいですよ。