AIコラム vol. 8

AIコラム vol. 8

2025.5.10

ライター 半田孝輔

Googleの大盤振舞。教育現場へプロンプト集を無料配布

2025年5月1日、Googleが自社のチャットAI:Gemini活用を想定した「学校のためのプロンプトライブラリ」の無料配布を始めました。

教育現場のDXを促進し、教育活動のさまざまな場面でAIを効果的に活用することで、先生たちの業務効率化、児童生徒の学習支援に役立てることを目的としているようです。プロンプトの「基本」と「応用」で構成されたページは教科書や問題集のようで、子どもでも馴染みやすいものとなっています(内容は専門的ですが…)。

ぜひ中身を見てほしいのですが、「優れたプロンプトに必要な5つの要素」など有効なパターンが抽出されており、教育現場だけでなく大人の働く現場でも生かせる内容となっています。

対AI用のプロンプトとしてだけでなく、日常・ビジネスの現場での、生身の人間に対する報・連・相のあり方、質問の投げ方などコミュニケーションエラーを防ぐことにも使えると個人的には感じています。また、プロンプト構築の考え方を会得することで、ビジネス現場での応用、生産性向上にもつながるでしょう。

無料配布の目的は教育現場のDX促進という社会貢献的、非営利的なものですが、掘り下げてみると別の狙いも見えてきます。私の考えでは、Googleの狙いは将来の顧客の創造と育成にあるのではないか。

現時点で子どもは支払い能力を持っていません。しかし、子どものときからAIを含めた新テクノロジーに慣れ親しむことで、それらサービスが身近なものとして浸透していく。

子どもは柔軟なのですぐ使いこなすことができ、優れたユーザーへと成長する。結果的にGoogleの技術やサービスの向上に貢献し、将来の重要な顧客として“創造される”。

また、現時点では支払い能力を有しないがゆえに、保護者、教育関係者がターゲットとして想定されているとも言えるでしょう。

斜に構えて見てきましたが、この顧客のつくり方、市場へのアプローチは参考になるのではないでしょうか(もっとも、今回はGoogleのようなメガ企業だからこその戦略とも言えます)。

【革命的なDeep Research】

さて、最近ではどのチャットAIにも「Deep Research(ディープ・リサーチ)」という情報収集・解析プロセスが追加されました。

(ちなみに「プロセス」と表記したのは、Deep Researchは正確には「機能」「ツール」ではなく、「概念」あるいは情報収集をより深く行うといった「行為」を指すものであるため。「Geminiの回答より」)

すでにお使いになった方もいると思いますが、論文が数分立てば完成してしまうほどの膨大な収集力と出力に驚かされます。これ、もうすでに学生はレポート課題で使っているのではないかと、学生時代にウィキペディアのコピー&ペーストが問題になっていた世代として思うのでした。とくに2025年5月時点で、GeminiのDeep Researchは限定的とはいえ無料で使うことができます。先に取り上げた「学校のためのプロンプトライブラリ」を活用すると、その真価を身に染みて体験することができそうです。

事業計画書や補助金等の申請書もAIを駆使して作成できてしまいますね(ゆえに、似通った内容にもなりがちかもしれません)。

私が軽い気持ちで出力させてみた「思想史の学問分野の概要」という論文のリンクを共有します(2025年5月末まで)。本文約5,000字が数分で吐き出されました。正直、出力された情報が膨大で、人力でのファクトチェックも難しいという印象。元々のその分野の知識や教養がないと真偽判断は困難。ただ、論の組み立て方など、「構造」を学び直すには最適とも感じました。