AIコラム vol. 5

AIコラム vol. 5

2024.12.10

【生成AIと著作権の関係性】

ライター 半田孝輔

著作権の基本的な考え方

前回のコラムでは、AIによる生成画像のビジネスへの生かし方を記しました。ただ、人物生成に制約がかかるなど何もかもが自由にできるわけではありません。「制約」という点で「あ、そういえば」と思ったのが、生成AIと著作権との関係性でした。学習データとして利用される何億というデータには著作物が含まれているはずですが、それは大丈夫なのか。そうしたデータを元に生成された写真やイラスト、映像、音楽などを公表あるいは販売するときにどのような問題が生じるのか。個人的な疑問もありつつ、経営やクリエイターの活動にも影響することですので、文化庁の発表する情報を簡単にまとめてみます。

【著作権の基本的な考え方】

「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」                       (著作権法第1条(目的)より抜粋)

著作権法や各種規定はこの考え方に基づいて設計されています。著作者の権利や利益を保護しつつも、生み出された著作物が文化や産業、社会の発展のために円滑に利用される、いわばバランスをとるために法整備が行われています。

著作物の定義は「思想又は感情を 創作的に 表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とあります。私的利用ならまだしも、著作物の複製や公の場での利用は著作権者への許諾が必要なことは皆さんもご存知なことと思います。ただ、単なる事実の記載、ありふれた表現、作風・画風、アイデアは原則として著作物に該当せず、許諾の必要はありません。

アイデアなどは創作を触発する、発展に寄与するものと捉えられているためです。表現されたもので何かのオマージュやパロディをよく見かけますよね。たとえば、私の大好きなTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのシングル曲「Baby Stardust」のジャケット写真はPink Floydの「夜明けの口笛吹き」そっくりに撮っています(気になる方は検索してみてください)。これについて咎める人はほとんどいないと思います。むしろ、国や時間を超えて文化が継承されていくその状況を歓迎する捉え方のほうが優勢ではないでしょうか。

生成AIと著作権の基本的な考え方

さて、ここで生成AIと著作権との関係性に移ります。

AIと著作権の関わりについては段階ごとの整理が必要となってきます。

  AIの開発/学習段階

まず生成AIは何億という途方もない情報を取り込んでいくため、その大量データの一つ一つについて許諾をとることは物理的に不可能。現行の法律内では許諾の必要はないとされています。ただし、たとえばライセンス料などが発生しているものは保有者側に不利益が生じるため扱いに注意が必要です。

  AIでの生成/利用段階

学習したものを私的に利用する生成行為について許諾等は必要ありません。ただし、生成物が一般に出回っているものとの類似性が認められ、意図的に出回っているものをベースとして生成し、それらを公表、販売する場合は許諾が必要となります。ですので、生成物に類似性や依拠性があると判断される場合は、利用しない、許諾を得る、既存の著作物と全く異なる作品となるように手を加える、などの対応が推奨されています。

  AI生成物は著作物に該当するのか

AIそのものが人の指示を受けずに自律的に生成したもの、あるいは簡単な指示によって生成したものは著作物と看されないようです。利用者が自身の思想感情を表現するための道具としてAIを使い、生成されたものは著作物に該当します。②とも重なるのですが、ポイントは創作意図があり、また創作的寄与が認められる行為かどうかが論点となります。

文化庁としてもまだ事例が少ないこと、生成AIの発展が著しいこともあり凝り固まった規制は設けず、考え方を示し、柔軟な対応を促すに留めているようです。著作権に関するトラブルが起きた場合、最終的な判断は司法に委ねられています。

AIに限った話ではありませんが、テクノロジーの発展と権利保護、その活用のあり方は切っても切れない関係にあります。新しく世の中に誕生したサービスで誰かを傷つけることなく、法的にも倫理的にも正しく利用したいですね。

AIコラム<小ネタ編>

<1回目のプロンプト>

「生成AIが考えている様子をイラストでください。」

すると、右の画像が生成されました。➡

2回目に、次のような質問をしてみました。

<2回目のプロンプト>

「このイラストはどのようなことを考えながら作成しましたか」

すると、右の画像を生成すると同時に➡

下記の回答が出力されました!

【回答】

このイラストは、生成AIの思考を抽象的に表現しています。

生成AIは、大量のデータから学習し、新たなコンテンツを生成する技術です。このイラストでは、生成AIの思考を、CPUやニューラルネットワークの光、そして抽象的なデジタルフォームで表現しています。

生成AIは、人間の創造性を拡張し、新たな可能性を切り拓く技術として期待されています。しかし、その一方で、著作権侵害やプライバシー侵害などの問題も発生しています。

このイラストは、生成AIの技術的な側面だけでなく、倫理的な側面も考慮しながら、生成AIの未来について考えるきっかけとなることを願っています。