ライター 半田孝輔
【行政サービスにも浸透。産業構造の変化がより進む】
AI関連のニュースを追っていると、行政や公共のお仕事に生成AIが随分と導入されてきた印象を受けます。生成AIについて「今後こうなるだろう」という予測はコロナ禍中から成されてきましたが、現実の方が変化は早く、未来を先取りしています。警察、土木、税務などあらゆる分野での活用がすでに始まっていますし、近い例では、宮崎市が市長の定例記者会見動画の制作に生成AIを使っています(なお、ニュースを見る限りGeminiを使用していますね)。地続きとはいえIT化やDXという言葉がもはや過去のものになってきました。
産業構造は劇的に変わり、求められる技能や人材、専門職のあり方も変化しています。ただ、変化の有様を見ていると、90年代以降にIT人材が即戦力として必要とされてきた流れと構造的には同じです。コーダーやプログラマーといったITエンジニアに替わり、生成AIの開発やシステム導入に関わるAIエンジニアの雇用が進む。すでに大手やスタートアップでは生成AIの開発と実装を行う人材の採用が本格化しています。
今後、専門学校や職業訓練校でAIエンジニアを養成する科目がつくられ、またスクールビジネスを行う事業者が出てくることでしょう。同時に自社生成AIを活用して顧客の課題解決を行ったり、あるいはシステム導入を勧める「AIコンサル」も、その業種や分野を問わず増えると思われます。宮崎でもクリエイティブや農食分野でその予兆が見られます。
【AIについて学んでも食えない⁉】
ただ、話はそう簡単ではありません。アメリカのニュースですが、生成AIの台頭により「コンピューターサイエンス」「コンピュータ工学」を専攻した学生の就職難が起きています。新卒レベルのスキルなら生成AIの方が優れていると現場は判断しているようです。
また、グーグルAI創始者のジャド・タリフィ氏のインタビューでは、AI時代を生き残るためには、高度なスキルよりも生成AIを使いこなす「感情的な調和」「優れた審美眼」が必要になると指摘されています。“雑用”仕事は人間よりもAIの方が秀でているため、何かスキルを伸ばしたり極めたりしたいのであれば、「役に立つ」こと以上の、心底興味を持てることに時間とリソースを注ぐ方が得策であるとされており、自身の情熱を追求することで審美眼などが養われると紹介されています。

●Geminiであそんでみた
Geminiで合成写真が作れるようになったという事で、スマホの中にあった写真3点を適当に選び、Geminiへ投げてみました♪また、作成した合成写真に宮崎っぽいもの「モアイ・埴輪をくっつけてー」と投げた写真です。皆さんも、遊んでみて下さい‼

さて、困りました。画像、動画、音声、テキスト、コード、プレゼン資料などは、短時間かつ高品質でAIが出力してしまう。しかも人件費なしで。最先端技術の学位を習得した者よりAIが優先される。支出を抑えたい企業側にとっては嬉しい話ですが、働く側にとっては悲鳴でしかない。業務を代行していた事業者にもダメージでしょう。
そうだとしても向こう数年は「人」であるAIエンジニアのポストや技能は重宝されると思います。ただ、そのAIエンジニア自体がかなり高度な人材。10代20代の若者はまだいいかもしれませんが、30代以上のビジネスパーソンなどがAIエンジニア、あるいはそれに類する技能を習得するためにプログラミングなどを一から学ぶのは相当なリスクが伴います。現実的にプレイヤーとしてAIエンジニアを目指すのは無理がある。
また、大企業はともかく、地方中小企業は人的にも物的にも限られた資本でAIの台頭に対抗、あるいはこの波を乗りこなさなければなりません。そうなると経営層も他人事ではないわけです。
さて、生成AIに駆逐されそうな私を含め、一定年齢以上のビジネスパーソンはどう戦うのか。
【“凡人”が目指す先は現場監督】
凡庸な答えになりますが、生成物を「まとめる」「つなげる」「生かす」ような監督者(ディレクター)、管理者(マネージャー)、編集者(プロデューサー)など、使う意味や意義を示し、道筋を設計する役を担うことが対抗策の一つだと思います。
それらは新しい技能というより、これまで培ってきた経験がフルに活用されるものです。とくに管理職や経営層であればあるほどに。チームを率いて意思決定や判断を行ってきた人たちほど応用が効くことではないでしょうか。培った社会的スキルを見直すことでブレークスルーが生まれる。たとえば、世界史のデータベース構築、Podcast配信を行う株式会社COTENの「データマネージャー」職は、先の役割の一つと捉えられます。
アメリカの就職難の話題で引用した記事ですが、その中ではテック系専攻よりも哲学専攻の若者の方が失業率が低いことが示されています。これが何を意味するのか。人文知の再評価、ビジネスへの応用が始まりつつある日本ですが、技術の進化の根底にある「考えること」「メタ思考」が生成AIに振り回されず、生成AIと共存しながら厳しいビジネス環境をサバイブするヒントになりそうです。
■参考先■
・事前放流の「空振り」防げ!ダムの操作にAI活用へ 最新の現場は
・警察庁「匿名・流動型犯罪グループ」首謀者検挙に生成AI導入へ
・「AIで稼ぐために博士号を取っても無駄」。グーグルAIチーム創始者が断言する「いま身につけるべき」意外なスキル
・AI検索 米新興企業 回数や閲覧数などに応じ引用元に収益分配へ
・AIに丸投げしても文章がつくれる時代に、自分のことばでnoteを書く理由
その他、Geminiとのセッションを通じて分析・収集
