ライター 半田孝輔
【コラムの悩み。情報ではなく洞察を届ける】
いかに経営に生かせるAIの情報をお伝えするか。本コラムを執筆する上で常に念頭に置いていることです。単なるハウツーの提供ではなく、最新のAIの動向をもとに私なりの洞察をお届けする。地方の中小零細企業・個人事業主が、テクノロジーに淘汰されず共生しながら持続的に活動できる道を探る。そのためには、業種を限定せず、どんな業態に属する人でもカバーできる内容を目指す必要があります。ホワイトカラーもいればブルーカラーもいて、そこにカテゴライズされない人もいる。地方とはいえど、仕事の中身や働き方は多様性に溢れています。
そこで悩むのは、AIに関する新しい製品や機能を紹介することは、もはや堂々巡りになってしまうということ。過去のコラムでも言及しましたが、AI技術の発展スピードは我々の想像をはるかに超えています。つい2年前までAIとチャットできることに驚いていたかと思えば、今では専門的な業務を人間のようにこなすAIエージェントまで登場しています。単なる性能向上から、実用性・統合・社会実装へとAI開発の現場は軸足が移っている。
先日、Geminiにインタビュー音源をもとに記事の叩きをつくってもらいました。その音源というのも、いっさい修正を加えていないiPhoneで録った音声メモです。結果は、生の音源だけでタイトルから見出し、リード文、本文まで全て揃えて3,000字で出力してきました。取材背景を知らない読者からすれば、それだけでも読み応えのある内容(もちろん、相応の指示は与えています)。SEOやAIOのためのテキストなら、これからはAIで十分だなという確信も生まれました。Web制作やSNSマーケティングの仕事はだいぶ省力化が進むでしょう。
どのAIサービスにおいても性能に大差はなく、マルチモーダル化も進んでいるなかで新情報だけ提供するのは、私自身、職務怠慢だなという思いもあり。やはり、経営に生かせる洞察のほか、将来の働き方にも言及する必要があるなと思っています。
【「生産性」と「代替」を取り違えてはいけない】
AIの台頭によりGoogleやAmazonなどのメガ企業の大量解雇が話題となっています。産業革命期に機織り機が改良され、生産性の向上とともに「人」が削減された出来事と同様に、テクノロジーによる代替が進む。技術革新のたび、何度も同じ現象が起きていることは歴史が示しています。大企業は今後この傾向が進んでいくことでしょう。
それとは対照的に、人手不足な業界もあります。農業などの一次産業、製造業などの二次産業、そして肉体労働が中心の第三次産業。まさに地方の中核を担う業種たち。人件費をかけてでも「人」に頼らなければ成立しない仕事がまだまだある。
私はこのコラムを執筆中の現在、みかん農園で収穫のアルバイトをしています。ひたすらハサミで手刈り。AI搭載の農業用ロボットが登場する昨今ですが、収穫作業が機械に代替されるのはずっと未来の話だなと実際に仕事をしてみて感じます。収穫作業は「単純」で「複雑」です。AIがどれだけ頭が良くても、収穫という身体的な動作、その速さと正確さ、それを低コストでロボットとして販売・供給できる技術はまだ追いついていない。

AI時代だからこそ、ホワイトカラー的な事務仕事は代替され、ブルーカラー的な仕事は価値を増す。それを象徴するかのように、アメリカでは「ブルーカラービリオネア」という現象が起きています。しかし、ここで示したい価値とは、「稼げる」ということではなく「身体」「人間」「個人」でしかできない仕事があるということです。肉体労働そのものというより、「その人」にやってもらいたい仕事というものが確実にある。
たとえば、あるカフェに勤める、あるバリスタの技術を完璧に模倣・再現できるAIが搭載されたバリスタロボットがいたとします。確かにそのロボットが淹れるドリップコーヒーやカフェラテはおいしいかもしれない。しかし、それでお客さんは喜ぶのか。

大手カフェチェーンであれば、いずれそうなる未来はあるかもしれません。しかし、結局はチェーンでさえも人が肝心だったことに気づくのではないか。とくにスターバックス社のようなオープンキッチンの店舗では。ここで重要なのは、人間と場所が持つ文脈と、その意味です。結局、労働やサービスの対価を受け取るのは人間です。その事実を忘れてはならない。
私はこの1ヶ月のあいだ、さまざまな仕事をする人に助けてもらいました。電気技師、建設業者、不動産業者、シェフやバリスタなどなど。どれもAIに「処理されたくない」内容でした。
テクノロジーは勝手に発展していくもの。われわれ“凡人”が力を注がなければならない部分はどこか。問いの答えが見えてきたような気がしています。
■参考先■
・モリジュンヤ氏note「Google、ブラウザ「Chrome」にAI「Gemini」を本格的に組み込むと発表」
・勅使川原真衣『働くということ 「能力主義」を超えて』
・日本経済新聞 米国で「ブルーカラービリオネア」現象 AI発展で潤う肉体労働者
以下「WIRED」より
・潤沢なるAIの時代に“ラグジュアリー”がまとう価値とは何か:ブルガリCEOインタビュー
・AIエージェントはフリーランス案件に不向き──新ベンチマークで明らかになった実力
・グーグルのAI改良に携わる200人超、労働条件を巡る対立のなかで解雇される
その他、Geminiとのセッションを通じて分析・収集
