ライター 半田孝輔
相変わらずAIをめぐる動きは加速しています。大企業はAIを用いた独自サービスの開発を進めたり、企業間で協力関係を築いたりと、資本力を生かした投資を行っています。
6月のコラムでは、電通グループがマーケティング領域に特化したAIエージェントの研究開発を開始したとお伝えしました。それに続き、7月7日にはAI活用・開発の中核を担う電通グループの横断組織「dentsu Japan AIセンター」の立ち上げを発表。リリースの最後で“「AIネイティブカンパニー」への進化を目指します”と宣言するほどですから、今後電通グループは広告代理店の枠を超えてインフラ企業へとその姿を変えていくかもしれません(既になっているとも言えますが)。

最近では、宮崎県の「観光AIチャットボット導入及び運用保守業務」の企画競争入札を、電通九州宮崎支社が他13者をおさえて獲得しました。PR以外の事業を電通が獲得する点は象徴的な気がしますし、地方自治体の入札案件に14者が手を挙げていることも注目に値します。それだけAI分野は技術を持つ企業にとってホットな話題なのでしょう。私自身、AI導入を促す広告やPR記事があらゆるデバイスを通して毎日目に入ってきます(これはAIの動向を追っている私に対して、SNSやブラウザがパーソナライズされた結果とも言えます)。AIの進化とともに、企業間競争もますます激化しそうです。
頭打ち感のある生成aiとハウツー
生成AIの能力に驚かされ助けられている日々ですが、最近はユーザーの一人として頭打ちを感じています。個々人の使い方によりますが、私の使用範囲では生成AIは既にオーバースペックなところがあります。私は音源のテキスト化、要約、資料作成、画像生成で助けてもらうことが多く、そのクオリティには毎度いい意味でのため息をついていますが、それ以上の驚きやリターンを感じることが以前より少なくなりました。
もちろん、慣れてきたことは否定できません。しかし、それらの使い方以上の出力方法を私自身が思いつかない、あるいは必要ないと感じてしまっているところも大きいかと思います。生成出力されたパーツを最後に統合するのは自分ですし。

生成AIに精通した方々の公開プロンプトやハウツー動画等を見ても、専門分化が進み、技術者ではない市井の人々にとっては、あまり実用的ではなくなっている印象を受けます。LINEやSNSと同じように世の中へ普及した結果ともいえますが、一般化したテクノロジーを仕事やビジネスの分野で活用するとなると、一般の人々より自在に使える技術と視座を培う必要があります。そこに物的・時間的資本をかけられるか。
どれだけAIが進化を遂げようとも、常に人間は「飼い慣らす」側にいないといけません。結局は、どういう目的で活用するのかという目標設定なしには、業務効率や生産性を上げるどころか作業が増える事態になりかねません。
ブレイクスルーを生む「sfプロトタイピング」
「頭打ち」とはいえ、やはり壁打ち相手として重宝している生成AI。7月はある案件のためにひたすらにアイデアの壁打ちとリサーチをしていました。本コラム読者の皆さんも経験があると思いますが、会話を繰り返すほどAIがユーザーを「理解」して、意向を先取りした意見を返してくるようになります。
一見「すげー」とはなるのです。しかし、繰り返し問答するなかで、どこまでやってもユーザーが気に入りそうな最適解を返してくることに気づきます。皮肉を言えば、先生の質問に対して我先に、その先生にとっての正解を言い当ててくる「優等生」のような感じです。見方を変えれば、ユーザーはAIという「他者」と会話をしているつもりですが、自分に最適化された回答しか返ってこないという意味で、そこにいるのは自分の「写し鏡」でしかないとも言えます。
この視点を持てるかどうかで、生成AIの使い方、出力された情報の受け取り方は変わっていくと思います。
生成AIとともに私が注目しているのが「SFプロトタイピング」という手法。これはSF作品の思考法を活用して、未来の世界観を描くことでその時代の製品やサービス、社会のあり方を構想するアプローチです。未来の可能性を自由に描き、物語として具体化する。その未来から逆算してアイデアを生む。この手法の利点は、未来を擬似体験でき、「今」の思考の枠組みを超えて複雑な問題を多角的に捉えられることにあります。それらは企業活動において、パーパス策定やビジョンの共有に生かすことができ、同時に発達著しいAIをどのように使うか(=どう使わないか)指針や目標を明確にすることにも役立ちます。

テクノロジーに振り回されず、“主体性を持って”使いこなすには、未来への想像力も必要となる。
【AI(テクノロジー) × SFプロトタイピング(人間の想像力)】について、今後も探究していきたいと思います。
(参考先)
・そろそろAIと対話しませんか?― AGI時代に価値を生む、人間の思考法の高め方
・AIに謝ることはできるのか? 『謝罪論』著者の古田徹也と考える、AI時代の「誠実」なコミュニケーション
・AIは「賢いフリ」をしていた──ハーバード大などが暴いたLLMの決定的弱点「ポチョムキン理解」とは?
・「SFプロトタイピング」で描く、“手触り”のある未来の価値と事業
・“あり得ない未来を想像できる企業が勝ち残る” ー未来のビジョンをストーリーから想像するSFプロトタイピングの意義
その他、Geminiとのセッションを通じて分析・収集
