善き未来を編む「ことば」 ── AIと人間の知性が融合する場所

善き未来を編む「ことば」 ── AIと人間の知性が融合する場所

2026.4.10

ライター 半田孝輔

テクノロジーの発展とともに生きている

歴史上、テクノロジーは発展するたびに懸念と批判を浴びてきました。それはいったい何に対しての懸念や批判なのかと当コラムを執筆するなかで思うことが多々ありました。

効率的、合理的、生産的になることであらゆる手間が省かれ、便利になる反面、人間性が損なわれたり、能力の退化が懸念されたり、尊厳が傷づけられる。しかし、問いたいのは、この「人間性」や「能力」、「尊厳」とは何を指すのか、なぜ、それらは毀損されてはいけないのか、ということです。

今後もテクノロジーの発展が止まることはないでしょう。しかし、どの時代においても人間性の危機が謳われ、最悪の場合は戦争という形につながり、終末が叫ばれるようになったとしても、私たちは日々進化するテクノロジーとともに今この瞬間を生きています。とはいえ、オルダス・ハクスリーのSF小説『すばらしい新世界』にあるように、科学技術による完璧な、人間に幸福をもたらす世界が誕生したとしても、ユートピアではなくディストピアとして私たち人間は受け取ってしまう。20世紀には同じような作品が数多く発表されています。なぜ、私たちはテクノロジーにワクワクしながらも、それが発展しすぎることに恐れや不安を感じ、暗い未来を想像してしまうのか。

壮大な話を展開したのには理由があります。AIが進歩する過程で私たちの働き方は確実に変化しています。今では文章や資料作成、コーディングはAIに任せておけば「正解」なものが出力される。便利な反面、仕事を奪われるのではないかという恐れや懸念は当初からありました。

ただ、そこで奪われる仕事は何なのか。仕事そのものが淘汰されるのか、それとも肩書きはそのままで役割が変化するのか。では、その変化の渦中で自分や自社はどのような仕事をつくり、価値を提供すればいいのか。など、問いを投げかけること、物事を細分化し「ことば」や「絵・イメージ」で表現することで、不明瞭だった物事が明らかになっていきます。

トップランナーたちを見ていると、何かを“つくる”仕事の中流工程はAIに任せて、人間は意思決定やビジョンを見せること、仕事の上流と下流に注力すべし、というのが共通の見解です。結局、仕事の相手は人です(動物や自然環境の場合もありますが、その成果を評価するのは人間です)。AIを通じたサービスの恩恵を受ける顧客は人。それはBtoCもBtoBも同じ。人が何に価値を感じ、豊かになれるかという本質は変わりません。

闇雲に最新AIを導入するよりも、想像力や判断力を鍛えるほうが効率的で生産的かもしれない。今必要とされているのは、AIを”飼い慣らす”方法とともに、人間の根源的な営みである“問う”力ではないでしょうか。

あるデザイン会社を経営している方はAIが制作を代替することについて、デザインの価値が揺らいでいるのではなく、揺らいでいるのはデザイナーのあり方であり、AIに何をつくらせるのか決める人の責任が重くなると語っています。そして、人間は制作から移行して統率を担えと。

この話を受けて、地方で仕事をしている人たちこそ勝機があるのではないかと感じました。地方は都市部と異なり仕事の境界や分業が少なく「なんでも屋」になりがちです。しかし、だからこそ、工程を把握していたり、指示者や現場監督と現場のプレイヤーが一体となっていたりと、ただ制作や実行を担うだけではないパターンが多いため、意思決定力や想像力は強いのではないか。

「僕はこれからの未来は明るいと思っている」。世界が混迷し、あらゆる事業に逆風が吹き荒れるなかで、最近お会いした経営者はそうおっしゃっていました。AIと人間の知性が融合して、善き未来をつくることにつながるよう、私自身も本業たる「ことば」と「思考」を磨いていきたいと思います。


■参考先■

本番環境のAIエージェント開発を「10倍」高速化――「Claude Managed Agents」発表

最新AI「Claude Mythos」がSFすぎる件 研究者の作った”牢”を脱出、悪用懸念で一般公開なし──まるで映画の序章

「組織の壊し方」を逆用して、動かない組織をぶっ壊すには?

AI時代、人の価値はどこに残るのか ー「ムダな寄り道」が、自分だけの判断基準を作る

AI時代、デザインは制作から統率へ移る

為末大氏のFacebook投稿 

LLM の次に来るものは「心」かもしれない

知性は脳の特定の領域からではなく脳全体のネットワークから生まれることが判明:最新のコネクトーム解析が解き明かす人間の一般知能の正体とは ・オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』(ハヤカワepi文庫)

その他、Geminiとのセッションを通じて分析・収集