ライター 半田孝輔
日々進化するAI
顧客企業の基幹システムにAIが組み込まれ、意思決定の中核がヒトからAIに置き換わっていくであろうという記事を紹介した前回のコラム。この1ヶ月間だけでも現実は大きく動いた気がします。
私がYouTubeで動画を視聴する際、上記の内容に近いコマーシャルが流れるようになりました。AIの動向を同じブラウザ上で調べているがゆえのターゲティングされた広告でもあると思うのですが、じわじわとサービスが広がりはじめた印象を受けます。すでに実装をはじめている企業もあることでしょう。8月になればAIの発展や社会の変革はさらに大きなものになっているかもしれません(ちなみにコマーシャルを目にした際、リアルな空間でリアルな役者を使ったのか、すべてAI環境で制作したのか、わからずに戸惑いました)。

人類史上最も変化の早い時代に生きている。そして、最も情報の溢れる時代でもある。われわれ人間のキャパシティを超えている状態。コスパやタイパのような考え方が出てくるのは当然のことでしょう。そうでもしないと日々「やっていけない」というのが本音なところかと思います。
AIを使いこなすにしても、エンジニアではない一般人はどの程度駆使できるようになれば、また、どの程度の距離感をもって扱えるようになれば「使いこなせている」状態になるのか。1年前は遠い存在だったAIエージェントが、すでに誕生して成果を出しているほど猛スピードかつ現在進行形で進化しているなか、時代に取り残されんと必死にしがみつくには、日常的に使い続けるしかない。自転車に乗るように、車を運転するように、なんとなく体で感覚的に落とし込むしかない。
最新テクノロジーと自動車
とは言うものの、皆が皆して器用に扱える訳でもない。また、使い方次第では自身や他者を傷つける諸刃の剣にもなる。大袈裟かもしれませんが、AIは自動車の運転と似ています。
運転技術を習得することでドライバーは移動の自由を得る。低速でも高速でも、スピードを調整して、どこまでも遠くへ行くことができる。運転にはどこか快感がつきまとう。自身の能力を拡張するテクノロジーを所有することは、どこか全能感をもたらします。運転が乱暴になったり、道行く歩行者や自転車にイライラを覚えたり。その鉄の塊が持つ力は、ヒトを殺める凶器にもなる。
AIを使うことで自身の持ち得る能力以上のことができるようになる。AIは自身の夢や欲望を叶えることのできる、自由を獲得し得るパートナーである。しかし、欲望には際限がない。使い方によっては自身のプライバシーや他者の権利を侵害することだってある。テクノロジーを飼い慣らすには、自動車の運転と同様に公共のルールとユーザーのモラルが必要となります。
世界各国でルール策定や法規制が試みられていますが、いずれも四苦八苦している模様です。最近では「Claude Fable 5」が米商務省からアクセス停止命令を受け、世界中で一時的にサービスが止められることもあるなど、圧倒的な能力を安全保障上のリスクとして捉える動きもあります。

われわれ一個人がAIを含む最新テクノロジーと共生していくには、結局のところ一個人の知性や想像力を養うしかないのではないか。
その一助として私が試みているのが、あえて「無駄」をつくること。そして、スピードを落とすことです。
あえての「無駄」と「減速」
リサーチのためウェブ記事を漁ることが多いのですが、最近では、あからさまにAIに食わせるための長文記事でなければ、時間がかかっても自力で読み通すようにしています。
結局、自身の知性を養うのは、己に最適化され、要約された状態で出力されたものをインスタント食品のように摂取するのではなく、本などをじっくりと噛み砕いて考えて、自身の言葉で表現できたかどうかだと思います。これは翻って、AIによって要約された世界(出力された結果)を自分や他者にわかるように翻訳し、正確に受け取ることのできるリテラシーを育むことにもなります。つまりはAIを使いこなすには、「遅い」知性の働きが必要だということ。
私が知性や想像力を強調する理由は、AIで何かを生成していることが、自分から離れていった先でどのような結果を生むのか、未来への想像が及ぶのかという点を問題にしているからです。

「使う」ことと「身につく」ことは異なります。AIにアウトソーシングをしていいものもあるし、アウトソーシングしてはいけないものもある。われわれはAIを使うために存在しているのではないし、AIを使うために業務効率化を行ない、働いている訳でもありません。
『我々は人間なのか?』という本では、ヒトは有史以来、道具(テクノロジー)を発明・発展させていくとともに、道具によって「リ・デザイン(つくり直す)」されてきたと述べられています。今われわれはAIによって、どのようにリ・デザインされているのでしょうか。
■参考先■
【書 籍】
・宇沢弘文『自動車の社会的費用』
・ビアトリス・コロミーナ 、 マーク・ウィグリー著 牧尾晴喜訳『我々は人間なのか?』
【オンライン記事等】
・YouTube「アントロピックの哲学者があなたの質問に答えます」
・WIRED「AIをめぐる神々の争い|テクノロジーの哲学マップから考える〈技術哲学入門〉」
・WIRED「「不老長寿」への投資には、身体における平等を乗り越えようとする意志が見える:下西風澄 ──「不老長寿社会」の設計図」
・山口周氏note 「「AI時代の人材育成」に関する議論の危うさについて」
「「正しさ」から「署名性」へ 生成AI時代に求められる「魅力的な間違い」」
「「タイパ」でますます弱く、貧しくなる」
・ITmediaビジネス「大手企業の48.3%「AIエージェントを現場で活用」一方で課題も」
その他、Geminiとのセッションを通じて分析・収集

