テクノロジー進化の裏で要請される企業内倫理

テクノロジー進化の裏で要請される企業内倫理

2026.2.10

ライター 半田孝輔

【我々は疎外されずに技術を飼い慣らせるか】

日常会話でAIが話題にのぼることはもはや“普通”となってきました。PC、スマホで生成AIと会話する風景はそこかしこで見られます。「Instagramが〜」「Xが〜」と私たちが普段会話で持ち出すネタの軽さと同じ程度で「AIが〜」「Geminiが〜」「ChatGPTが〜」と口にしています。

ChatGPTは「チャッピー」の愛称で親しまれ、相談をしたり占いをしたりと、生成AIを軽い気持ちで使う場面はだいぶ定着しました。私の友人は海外を旅する際のガイド役として、生成AIをコンシェルジュ的に使っています。ビジネスの現場ではDXや生産性向上の名目で活用されてきましたが、すでに生成AIは一握りの人たちが優先的に持ち得るツールではなくなりました(もちろん、生成AIを起動できる端末を持っていることが前提ですが)。

今年1月、友人知人の経営者たち数人とAIをテーマとした対話会を行いました。皆、仕事やプライベート関係なく生成AIを使っており、その恩恵を受けているとのこと。システム開発の会社を経営している方は以前複数人で対応していたクライアント業務を、今は自身とAIだけで賄っていると話していました。月2,000円程度の課金で、業務量を減らさず少人数でこれまでと同等の成果を出すことができる。人件費・固定費も浮く。さらに、AIは24時間休むことなく疲労しらずで働き続ける。まさに「働いて働いて働いてまいります」を地で行く存在。経営者としてこんなに嬉しいことはないでしょう。

興味深かったのは職種や業態によって最適なAIが異なるということです。最近の生成AIは与えられた指示を処理するだけでなく、人間の感情面への理解を示すように改良されています。共感や同情のような振る舞いを見せ、よりユーザーの人格に合わせた形で返答するようになってます。しかし、先の方はこの情緒性は仕事をする上で非効率に感じるそうです。エンジニアとして理知的でクールなアシスタントタイプであるGeminiやClaudeを使っており、共感性が強い愛されキャラ型のChatGPTは扱いづらいと言っていました。

AIの恩恵を受けて省力化を行い、代表1人しかいないという会社は増えていることでしょう。法的には「法人」だけど実態は「ひとり親方」的な会社は多くなりそうですね。それでも、経理・財務的なポジションは今後も揺るがないのではないかと不勉強ながら思っています。この辺りはバックオフィス業務を担当されている方に話を聞いてみたいところです。

生成AIが勃興した当初は、各AI企業は情報処理や課題解決力に注力してきましたが、この数年で差別化が進んできた印象です。開発元の設計思想、顧客創造のあり方によって各生成AIの特徴、運用ポリシーや規約も変わってきています。昨年10月、OpenAIはChatGPTの成人向けコンテンツ生成の緩和を示唆して賛否両論を巻き起こしました。これは世界中に顧客を抱えるGoogleなど大規模プラットフォーマーに対する差別化、ポジショニングとも取れます。AIのキャラクター化が固定されていき、そのファン層が固まっていき、主な収益源とその構造、利益配分のあり方も各AI企業によって変わっていきそうです。

サービスの提供のされ方、使い方次第で我々の生活風景は変わりますが、やはりサービスに使役されてしまい、時間を浪費し、情報の波に飲まれて疲弊することは避けたいと思うのが人間のさが。

先の対話会では、私以外ほとんどが経営層の方々だったのですが、皆口を揃えて「問いを立てられる人」「AIを学びに活用できる人」が生き残っていくだろうと話していました。また、AIによって余裕ができた資金を、福祉的な支援や社会的意義のある事業、そのような活動をしている個人に投資をしているという方もいました。

最近では、企業内の倫理的統治を推し進める役割として「CPO(最高哲学責任者)」という言葉も出てきています。テクノロジーや社会潮流に翻弄されず、自社利益と社会利益がマッチするよう指針を示す。その範囲内でAIを最大限に使いこなす。そうなれば「なんだかなあ」とモヤモヤしながら働くことも減るかもしれません。


■参考先■

信頼される文章が増えるほど、表現が死ぬ(Osamu Iijima @nide Inc./ vina nide Co.,Ltd)

「AIで大量失業」は空想、むしろ雇用生む マルクス・ガブリエル氏(日本経済新聞)

ChatGPTの成人向けコンテンツ規制緩和がDX推進に及ぼす影響(MU Blog)

ChatGPT、成人向け表現を解禁へ。魅了するAIに潜むリスク(Wired)

チャットGPTに年齢予測機能 18歳未満ならコンテンツ制限 (ロイター)

・半田のInstagram投稿

文学と汗 第5号 モノローグ ⇄ プロローグ/半田孝輔

その他、Geminiとのセッションを通じて分析・収集